こんにちは yu-riです。
本日は「熱中症と腎不全」の第5回目です。
ここまで体温調節機能・熱中症・腎不全の
知識をまとめてきました。
今回は実際の問題文を整理していきましょう。
黄色が疾患
赤が異常高値
青が異常低値
緑が異常所見
です。
問題文の整理

熱中症に関して
今回の問題の肝となるのは熱中症でした。
Aさんが熱中症になった原因はマラソンであると考えられます。
屋外で行う激しいスポーツで
不感蒸泄や発汗が多く
脱水になりやすいと考えられます。
そんな中「嘔吐」「意識障害」「発熱」があったら
やはり鑑別に上がるのは熱中症でしょう。
ちなみにどの程度の意識障害であったかは明記されていませんが
気管挿管されたということはGCS8点以下だった可能性がありますね。
とするとⅢ度の熱中症であったと考えられます。

治療として
意識障害のため呼吸器管理
尿量測定(In-Outバランス)のため膀胱留置カテーテル挿入
体温を下げるために体表面のアイシングと点滴による血管内冷却が行われています。
バイタルサインについて
ICU入室時のバイタルサインは血圧以外は異常値です。
ただしJCSに関しては呼吸器管理中であり
問題文には書かれていませんが
鎮静をかけられていると考えられますので
判断が難しいところです。
体温は搬送時より下がってきているのでいい傾向ですが
呼吸数と脈拍には注意が必要ですね。
血圧がなんとか保たれていますが
低い血圧と頻脈はショックに移行する前の症状です。
早期の治療介入と観察を注意深く行います。
尿について
暗赤色尿は今回の場合ミオグロビン尿と考えられます。
ミオグロビンというのは
筋肉に含まれているタンパク質の一つです。
筋肉が激しい運動や外傷によって障害・破壊された時に
流出し血液中に流れ込み、尿として排出されます。
この所見は見落としてはいけません。
採血の結果が出るには小一時間かかってしまいますが
尿の正常の観察は
尿さえ出れば簡単に観察することができます。

暗赤色尿(ミオグロビン尿)をみたら
- ミオグロビンの流出➡︎尿細管などにつまり腎後性腎不全
- Kの流出➡︎高K血症➡︎致死性不整脈
- 出血➡︎循環血液量減少性ショック
などを考えることができます。
その後の治療介入や看護介入にも役立ちますので
しっかり知識として入れておきましょう。
電解質について (Na:138~145、Cl:101~108、K:3.6~4.8)
NaとClは細胞外液に多く含まれている電解質です。
発汗により大量に流出したために低値になっていると考えられます。
一方でKは高値です。
先述したように
筋肉の破壊によってKが血中内に流出したために高値であると考えられます。
何度も繰り返しになってしまいますが
高K血症は致死性不整脈の原因となる危険な状態です。
Kを下げるための治療(透析や点滴)と
モニター観察をしっかり行なっていきます。
不整脈に関する詳しい内容はこちらをご覧ください。
CK(40~250)
非常に高値です。
筋肉が破壊されているためと考えられます。
CKはさらに細かく
- CK-BB
- CK-MB
- CK-MM
の3つに分類することができます。
Bは脳(Brainブレイン)、Mは筋肉(Muscleマッスル)の頭文字です。
なので
- CK-BB➡︎脳由来(脳血管障害など)
- CK-MM➡︎骨格筋由来(筋肉の損傷など)
という意味になり
特殊な筋肉である心筋由来のものを両方合わせてCK-MBと言います。
普通の採血ではここまで細かく検査することはほとんどないですが
頭の片隅にでも置いといてください。
腎機能関して(BUN:8~20、Cre:男性0.65~1.07 女性0.46~0.79、尿量0.5mL/Kg/h)
- 尿素窒素、クレアチニンが異常高値
が認められますので腎不全の状態と考えられます。
尿量に関しては体重1kgあたり1時間に0.5mL最低必要と考えます。
Aさんの体重は記載されていないので断言はできないものの
23歳男性の体重が40kgというのは考えづらいですよね。
なので尿量が減少していると捉えることもできるので
一応マーカーはしておきました。
これも腎不全の一つの指標になりますね。
肝機能に関して(AST:13~30 ALT:4~44)
- AST<GOT>、ALT<GPT>共に異常高値
が認められるため、肝障害が考えられます。
問題の解説
問題文の整理をしたところで
問題の解説に入っていきましょう。
【問1】の解説

答えは2、3でした。
K、CK、ミオグロビン尿などから筋肉の障害が考えられ
またそれらの異常により不整脈を引き起こしやすくなします。
1は血液データから正常範囲内であると考えられます。
ただし脱水により血液が濃縮されてこの値なので
脱水補正のために水分が増えると
血液が薄まり
場合によっては貧血様の値になることがあります。
4に関しては、
血圧や尿量が保たれており
まだショックに至っているわけではないので✖️です。
ただし、ショックに行こうするかもしれないという視点は
持っておく必要があります。
脱水による循環血液量減少性ショックや
高K血症による不整脈から心原性ショックを
引き起こす可能性があります。
5は少し迷ってしまった人もいるのではないでしょうか。
尿量に注目してしまうと一見使っても良さそうな気がしますが
そもそも脱水であることを忘れてはいけません。
ただでさえ循環血液量が少なく
腎臓に回ってくる血液も少ないからこそ
尿量も少なく、腎不全となっているんでしたよね。
ここで利尿薬を使ってしまうと
せっかく点滴で増やした循環血液量を尿として外に出してしまうことになります。
腎機能の回復も見込めません。
なのでこの場面では不正解となります。
【問2】の解説

続いて問2ですが
腎機能の悪化により透析を行なった様ですね。
その結果、尿量は十分ですが
クレアチニンが依然として高値であり
まだ完全に腎不全を脱したわけではないということが
この問題を解く上でのポイントです。
ここに注目すると
腎機能を保護するための指導が必要ということがわかります。
それを踏まえると
答えは2でした。
腎臓病食の基本は「塩分制限」「低タンパク質」「高エネルギー」でしたね。
今回はまさにそのまま問題で出てくれました。
1は除外しやすいですね。
そもそも何で腎不全になったかというと脱水だったからです。
水分制限をしてしまうと再び脱水になってしまう可能性があります。
ただし、ここで気をつけなければいけないのは尿量です。
ここでもし尿が少ないようであれば
飲水すればするほど体内に水分が溜まっていき
今度は体液過剰になっていきます。
尿量とのバランスを考えての指導が必要です。
3は少しわかりづらかったかもしれません。
運動を行うと新陳代謝が促進され
その結果老廃物も生まれることになります。
腎臓はそもそも体の中のいらないものを尿として体外に排出するのが仕事でした。
なので老廃物が増えるということは
腎臓の仕事も増えるということです。
疲れ切って、やっと少し元気を取り戻してきた腎臓に
大量を仕事を押し付けるとどうでしょう・・・
また腎臓が疲れ切ってしまうことになります。
なので腎機能が回復するまでは
必要以上の運動は避け、安静にすることも治療になります。
4は、生野菜にKが多く含まれていることを知っておけば
簡単に除外できる問題です。
現在のKの値は出されていませんが、
腎機能が回復しきれていないことを考えると
Kの排出も通常時よりは劣っていると考えられます。
そこにKを多く含むものを摂取してしまうと
体内にKが多くなり高K血症に再びなることが予想されます。
先ほども書いたように
高K血症は致死性不整脈などを引き起こす危険性があります。
なのでむしろ生野菜は控えてくださいと指導が必要になります。
ちなみに「生」野菜が危険なのであって
茹でることで摂取が可能になります。
Kは水に溶けやすい性質があるので
野菜をしっかり茹でることでKを減らすことができます。
もちろんゼロにはなりませんが
腎臓病食では野菜をしっかり茹でてからの摂取を指導することもあります。
これで「熱中症と腎不全」の問題は終わりです。
お疲れ様でした。
自分の中で根拠を持って答えられるようになるまで
繰り返し問題を解いてみてくださいね。
次回からは
新しい状況設定問題を元に勉強を進めていきます。
一緒に頑張りましょう!!
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