脱水② 高張性脱水

国家試験対策

こんにちは yu-riです。

今回は脱水の第2回目になります。

前回、脱水を学んでいくうえで必要な知識を簡単にまとめました。(前回の記事はこちら

それを踏まえ

少し詳しく脱水について学んでいきましょう。

 

全体像

前回も触れたのですが

まずはサラッと全体像を確認しておきましょう。

 

脱水とはどういう状態だったでしょうか。

 

脱水というと

水分が足りなくて体がカラカラというイメージですが

ただ水分が足りないのではなく

水分と電解質のバランスが崩れてしまっている状態だよ

という話をしました。

 

バランスの崩れ方は

  1. 水分が足りない状態(水分<電解質、濃度が高い状態)
  2. 電解質が足りない状態(水分>電解質、濃度が低い状態)
  3. 水分も電解質も足りない状態

の大きく3つに分けられます。

イメージは水と混ぜて作るカルピスです。

これらのバランスの崩れ方で起こる脱水には

それぞれに名前がついています。

  1. 高張性脱水(水分欠乏性脱水)
  2. 低張性脱水(Na欠乏性脱水)
  3. 等張性脱水

一口に「脱水」といっても

バランスの崩れ方が違う

つまり脱水が起こる原因がそれぞれ異なります。

原因が違うので

治療法も異なります。

一つ一つ見ていきましょう。

 

高張性脱水(水分欠乏性脱水)

まずは高張性脱水についてまとめていきましょう。

 

高張性脱水とは

高張性脱水は水分欠乏性脱水ともいい

その名の通り水分が少なすぎる状態のことです。

水分が少ないため電解質の濃度が濃くなり

浸透圧が高くなるため「高」張性脱水といいます。

浸透圧については前回の記事で確認しておきましょう。

 

原因

高張性脱水が引き起こされる原因は大きく3つです。

  1. 水分の摂取不足
  2. 腎性の水分喪失
  3. 腎性以外の水分喪失

まず1つ目、水分の摂取不足。

これはわかりやすいですね。

意識障害や嚥下障害などで自力で水を飲めなかったり

あまりないですが

遭難や災害により水の供給が十分にされない状況もこれに当てはまります。

 

ここで覚えておきたいのが

高齢者の脱水です。

加齢変化によりのどの渇きを認識する能力が低下するといわれています。

自分でのどの渇きの判断ができず

気が付いたら高度な脱水に陥っていることがあります。

高齢者施設では時間で水分摂取の機会を設けることもあるようです。

 

関連して覚えておいてほしいのが

高齢者の熱中症です。

渇きの認識に加え

暑さ・寒さに対する認識能力も低下します。

知らず知らずのうちに

高温環境で水分摂取もせずに過ごしてしまう。

自分で気づくことができないので非常に危険です。

 

 

2つ目は腎性の水分喪失です。

「腎性」というのは

「腎臓が原因で」という意味です。

腎臓は尿を作る器官ですので

尿に関連する脱水と考えてもいいと思います。

 

本来腎臓では電解質のやり取りで生まれる浸透圧を利用して

水分を濾しだし尿を作り出しています。

なので尿にも適切な濃度があるのですが

これが変化することにより水分が多く出ていってしまい

結果として脱水が起こります。

具体的には

尿崩症、糖尿病などの疾患や

治療として使われる高張性輸液(高濃度のブドウ糖液など)、利尿薬などがあげられます。

 

3つ目は腎性以外の水分喪失です。

不感蒸泄の増加ですね。

私たちは普段から気づかない間に汗をかいたり

呼気に水分が混じっているなど

目に見えない形で水分を失っています。

この目に見えない・感じない水分喪失を不感蒸泄といいます。

発熱などで体が高体温になった際には

発汗量が多くなります。

また過換気など呼吸数が増えれば

その分出ていく水分量も多くなります。

 

症状

次に高張性脱水の症状を見ていきましょう。

ポイントは

水分が少ない・足りないことを

「血液量が足りない」と考えることです。

実際には血液自体が失われているわけではないのですが

上記の原因で失われている水分は細胞外液の水分。

つまり血漿部分です。

赤血球などの血球成分は失われていないので

イメージはどろどろな濃い血液です。

ただし実際には

細胞内から水分が補われるため

よほど重症でなければ見るからにどろどろにはなりません。

あくまで勉強するうえでのイメージです。

 

血液が少ないとどういうことが起こるかは

以前ショックでも学びましたね。

近い病態としては

循環血液量減少性ショックでしょうか。

もちろんショック状態まで至っている場合には

非常に高度な脱水ですが・・・

イメージは近いと考えていいと思います。

症状としては代表的なのは

血圧低下、めまい、ふらつき、口渇感、尿量減少などです。

痙攣などを起こすこともあります。

血流量が少ないから血圧低下が起こるのはわかりやすいと思います。

血圧が低くなると脳血流量が減ります。

脳血流量が減るとめまいやふらつきが出て

それが重度になると痙攣や意識消失につながります。

また腎臓への循環血液量が少なくなると

尿にするための水分が減ることになるため尿が少なくなります。

口喝はすこし機序が異なります。

細胞外の水分量が少なくなると

浸透圧が高くなり

それをもとに戻そうとして細胞内から水分がしみだしてきます。

すると当たり前ですが細胞内の水分が足りなくなります。

こうなると口腔粘膜や皮膚の乾燥という形で症状が現れます。

 

これらに関連して頭の隅に置いておいてほしいのが

感染リスクの増大です。

え、どんな関係があるの?って感じですよね。

 

まず尿量の減少から考えましょう。

普段膀胱・尿道内は無菌状態ですが、

万が一細菌感染が起こったとしても

尿が洗い流すことによって重大な感染には至らずに済んでいます。

尿量が減るということはこの洗い流す作用も減るということです。

尿路感染症発症の可能性が増えますね。

陰洗大事です。

 

次に口喝です。

普段唾液は口腔内の清潔を守っていますが

脱水状態では唾液量が減少し

口腔内が汚染状態となります。

口腔内で細菌が繁殖し

これを誤嚥したら肺炎発症の原因になります。

口腔ケア大事です。

あるいは誤嚥しないような体位調整も大事です。

 

もう一つ皮膚の乾燥も考えておきましょう。

皮膚は外の環境から体を守るバリア機能を果たしています。

乾燥することによりバリア機能が低下し

感染症にかかるリスクが増えます。

イメージは冬のあかぎれでしょうか。

清拭で体の清潔を保つことや保湿大事です。

 

少し脱線してしまいましたね

すみません。

 

治療

最後に高張性脱水に対する治療についてまとめていきましょう。

高張性脱水は何らかの原因で水分を多量に失ったことによって起こっています。

なので必要な量の水分を補ってあげることが治療になります。

 

自力で水分摂取ができるのであれば

飲水など水分摂取を促す。

自力での水分摂取ができないのであれば

点滴から水分を補ってあげます。

なんの薬液を点滴するかはもちろん医師の指示になるのですが

低張電解質輸液を主に使用します。

水分が失われて電解質の濃度が高い状態にあるため

電解質の配合が少ない輸液を選択することで

適切な濃度に調整していきます。

水分は浸透圧の高いほうから低いほうへ移動することを覚えておけば簡単ですね。

 

そのほか脱水になる原因がある場合には

その治療が間接的に脱水の治療になります。

例えば発熱であれば

水分補充に加え解熱剤の使用や

発熱の原因に対する治療ですね。

 

 

いかがだったでしょうか。

本日は脱水の中でも水分の喪失で起こる

高張性脱水について学びました。

次回はそのほかの脱水について学んでいきましょう。

お疲れさまでした。

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