ショック④ 血液分布異常性ショック

国家試験対策

こんにちは yu-riです。

本日はショックの分類の4つ目

血液分布異常性ショックについてまとめていきましょう。

 

そろそろ循環の3要素はスラっと自然に出てくるようになりましたか?

3要素のうちの血管抵抗に異常が起こるのが

血液分布異常性ショックでしたよね。

そのことをまず念頭に置いて

本日の勉強に入っていきましょう。

 

血液分布異常性ショックの原因

原因は大きく3つに分けられます。

  • アナフィラキシーショック
  • 敗血症性ショック
  • 神経原性ショック

ショック①でも触れたとおり

血管の異常で起こるショックを血液分布異常性ショックといいます。

通常であれば血管の収縮・拡張をコントロールすることで

血圧の上昇・下降をコントロールしていますが

上記3つの病態では

それぞれの原因によって

そのコントロールがつかない状態に陥りショックに至ります。

それぞれ機序が違いますので

一つずつ見ていきましょう。

アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックとは

ざっくりいうとアレルギー反応のひどい奴です。

原因は様々で

抗菌薬や痛み止め、造影剤などの薬剤や

ハチやクラゲなどの毒を持つ生物からの刺傷

小麦粉やソバをはじめとした食物など多岐にわたります。

上記の原因となる物質を投与・接種後

数分で発症するのが一番の特徴です。

 

アレルギー反応によって出てくる物質(ヒスタミンなど)によって

血管拡張や血管透過性亢進が起こります。

血管拡張は字のごとく血管が広がることです。

血管が広がるということは

血流の勢いがなくなる=低血圧になるということです。

これだけでもやな感じなのに

さらに血管透過性亢進という現象が拍車をかけます

血管透過性とは

血管壁を水分や小さい分子は透過することができ

それを利用して体内の環境を一定に保とうとする働きの一つをいいます。

亢進ということは

より多くのものを通りやすくするということです。

血管透過性亢進が起こると

血液中の血漿が血管外に透過します。

すると血管の中では血漿が失われた分

血液量が減ります。

つまり循環血液量減少性ショックと同様の病態になるわけです。

ただでさえ血管拡張によって低血圧になっているところに

血管透過性亢進で循環血液量が減ったらどうでしょう。

さらに低血圧になりますね。

もうやばい感じが伝わっているかと思います。

 

そしてさらに追加で厄介なのが

血管外に流出した血漿です。

これらは全身の浮腫として見える形で現れるのはもちろん

目に見えないところでも起こります。

気道におこると咽頭・喉頭浮腫で気道閉塞

腸管におこると腸管浮腫からの腹痛や下痢など。

特に喉頭浮腫からの気道閉塞は非常に怖いです。

先ほども特徴といったように

原因物質を摂取して数分でここまで至ってしまうことがあるわけです。

低血圧からの多臓器不全にいたるにはある程度の猶予がありますが

気道閉塞による窒息はショック以上に一刻を争うものです。

 

少し脱線してしまいましたのでまとめると

アナフィラキシーでショックが起こる原因は

アレルギー反応の結果出てくる物質により

血管拡張・血管透過性亢進が起こることです。

 

治療としては

アドレナリンの筋肉注射がまず挙げられます。

アドレナリンは副腎皮質ホルモンの一種で

  • 強心作用(心臓の動きを強め拍出量を多くする)
  • 末梢血管の収縮作用(末梢を引き締めて重要臓器への循環血液量を多くする)
  • 気管支拡張作用(呼吸をしやすくする)

などの作用があります。

食物アレルギーなどを持っている方のなかには

エピペンを持ち歩いている方もいますね。

エピペンはアドレナリン自己注射製剤で

誰でも使えるように安全かつ簡単に設計された注射です。

ちなみにアドレナリン=エピネフリン=ボスミンです。

生理食塩水などの急速輸液を合わせて行うことで

血流量を確保しショックを防ぎます。

 

また喉頭浮腫などによる呼吸困難感がある場合には

酸素吸入を行い

少しでも高濃度の酸素で呼吸できるようにします。

必要であれば挿管するなど気道の確保が重要です。

 

薬剤を使用する場合には

まずその薬剤に対するアレルギー歴がないかを確認します。

抗菌薬や造影剤はアレルギー歴が投与後30分ほどは

アレルギー症状の有無を確認します。

万が一アレルギーが出現した場合には

必ず記録を残し、次回その薬剤を使用しないようカルテなどで共有することも大切です。

 

敗血症性ショック

次に敗血症性ショックの原因を見ていきましょう。

 

まずそもそも敗血症とは何でしょうか。

感染が原因で

全身性の炎症反応が生じた状態をいいます。

例えば誤嚥性肺炎の患者さんがいるとします。

今は肺だけの炎症にとどまっていますが

そのまま放っておいたらどうでしょう。

あるいは治療が効かなかったら。

そうなると感染は血流にのり全身へと広がっていきます。

この全身に感染が広がり

体のあちこちで炎症が起こっている状態を敗血症といいます。

 

肺血症では細菌が全身に回っている状態になるわけですが

この細菌たちの毒素によって血管拡張が起こります。

血管拡張が起こると血圧が低下することは

前述しました。

血圧が低下すると

心臓は血流を保つために心拍出量を頑張って増やします。

つまり末梢まで血流がいきわたるんですね。

そうすると何が起こるかというと

末梢冷感が起こらない「ウォームショック」と呼ばれる現象です。

通常ショックでは末梢冷感が起こるはずですが

肺血症では末梢は暖かい。

これが特徴ですね。

しかしこの現象は長くは続きません。

心臓が頑張って何とか血流を保っていたので

心臓が疲れてしまえば血流は保てなくなってしまいます。

ここでやっと末梢血管を収縮させ重要臓器への血流を保とうとしますが

時すでに遅し

ショックへと至ってしまうわけです。

 

治療法としては

感染が原因なのですから

まずは感染源を除去します。

尿バルーンや中心静脈カテーテルなどが感染を起こしている場合は

抜去または交換します。

また原因菌となっている菌に対し

抗菌薬や免疫グロブリン製剤の投与を行います。

 

敗血症に関する指標としてSOFAというものがあります。

ただ結構評価の仕方が難しいです。

興味がある方は調べてみてください。

ここではもっと簡易的に使えるqSOFAというものをご紹介します。

qSOFAとはベッドサイドで簡易的にみることができる敗血症の指標です。

敗血症の診断をする指標ではないのでそこは注意ですが

敗血症の可能性を考えて精査を進めるべきかを考えるときの

一つの指標になります。

発熱があり何らかの感染が疑われる患者に対し観察を行います。

意識変容・呼吸数・収縮期血圧の3点です。

看護師でも簡単に1、2分程度で観察できますよね。

これだけで敗血症と決めつけてはいけませんが

早期に精査や治療を行うなどの行動を起こすきっかけになる指標ですので

ぜひ覚えて、臨床の場で使ってみてくださいね。

 

神経原性ショック

さてショックの分類の最後

神経原性ショックです。

ここに関してはほとんど国家試験に出題されることはありませんので

サラッと終わらせましょう。

 

その名の通り神経の障害を原因として起こるショックです。

血管拡張は自律神経によって支配されています。

交感神経が血管を収縮

副交感神経が血管の拡張を行い

この二つがバランスをとることによって

血圧をコントロールしているわけです。

逆に言うと

バランスが崩れてしまうと血圧のコントロールを失ってしまいます。

 

脊髄損傷による直接的な自律神経へのダメージや

不安や疼痛・緊張などによる迷走神経反射で

自律神経のバランスが崩れると

血管拡張が起こります。

血管拡張が起こると血圧が低下しますね。

迷走神経反射によるものであれば

一過性のものであることも多いですが

脊髄損傷やもっと上位の脳の疾患であるときには

治療が困難です。

神経は修復困難な部分ですので

脊髄損傷や脳の障害による低血圧の場合には

カテコールアミンなどの薬で

血圧のコントロールを行っていきます。

 

 

 

4回にわたりショックについてまとめてきました。

いかがだったでしょうか。

覚えることが多いように見える分野ですが

機序を理解できると

暗記せずとも答えられる問題がほとんどです。

やみくもに覚えるのではなく

なぜそうなるのかを理解すると

自然と症状や治療方法も理解できますし

臨床に出てから強いです。

難しい言葉も多かったかもしれませんが

ここは踏ん張って理解できるように繰り返し復習してみてください。

 

お疲れさまでした!

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